「パーソナルジムを開業したいけれど、本当に今がチャンスなのだろうか?」
そんな疑問を抱える方が、近年ますます増えています。
かつては一部の富裕層やアスリートのための施設だったパーソナルジムも、今や20〜40代の女性を中心に「健康投資」として定着し始め、需要は多様化。美容や姿勢改善はもちろん、予防医療やリハビリ目的で通う方も珍しくありません。
2025年現在、パーソナルジム市場は堅調な拡大を続けており、「競合が多い=もう遅い」とは一概に言えない状況です。むしろ、ニーズの細分化により、“専門性”を持つジムにはチャンスが広がっています。
本記事では、最新の市場動向や顧客ニーズの変化をデータと共に読み解き、「開業のタイミング」として“今”がどうなのかを客観的に整理します。
これから開業を考えている方、方向性に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

【監修者】向井崇敏/理学療法士
ASAP株式会社代表取締役。病院・訪問など医療介護現場にて勤務したのちに独立。2020年に「骨格から美ボディづくり」をコンセプトとしたB.E.Tパーソナルジムを設立。現在はトレーナー教育&パーソナルジム開業コンサルティング事業「THE STORY」を運営。
なぜ今、パーソナルジム市場に注目が集まっているのか
健康志向の高まりとフィットネス文化の浸透
ここ数年で、「健康は自己投資のひとつ」という価値観が一般層にも定着し始めました。
特に20〜40代の働き盛りの世代では、将来の病気を予防するためにジムに通う人が増え、「単なるダイエット」から「長期的な健康管理」へとニーズがシフトしています。
また、SNSやYouTubeの影響で、トレーニングが身近な“ライフスタイルの一部”として浸透しつつあります。運動やストレッチを日常に取り入れたり、プロのトレーナーから指導を受けることは、もはや一部の人だけの習慣ではなくなってきました。
こうした背景が、パーソナルジムへの関心をさらに高めているのです。
「個室」「プライベート」需要の拡大
新型コロナウイルスの影響により、多くの人々が「人と距離を保ちながら安全に運動できる環境」を求めるようになりました。その結果、大手フィットネスジムに代わって、個室空間でトレーニングできるパーソナルジムの人気が急上昇。
「他人と接触しない」「少人数制で安心」「自分のペースで集中できる」といったメリットが、特に女性や初心者から強く支持される要因となっています。
これは、今後も継続的に求められるトレーニング環境の条件になる可能性が高く、パーソナルジムは“時代に合ったサービス”としてますます注目される存在になっていると言えるでしょう。
オンライン指導・アプリの普及
コロナ禍をきっかけに、オンラインフィットネスの需要も爆発的に増加しました。Zoomを使ったオンラインパーソナル、フィットネスアプリ、YouTubeライブなど、トレーニングの形は多様化し、それに伴い「トレーナーという職業の可能性」も広がっています。
現在は、対面とオンラインを組み合わせた“ハイブリッド型パーソナルジムの開業スタイルも増えてきており、ジムを開かずに自宅からスタートする事例も少なくありません。
このように、柔軟な働き方・多様なサービス形態が選べるようになったことも、開業を後押しする要因となっています。
パーソナルジム業界の市場規模
2025年の国内市場規模と成長率
2025年現在、パーソナルジムを含む国内フィットネス市場は4,800億円以上に達すると推計されており、その中でもパーソナルジムは年々シェアを拡大しています。特に都市部では競合が増えている一方、郊外や地方都市ではまだまだ“空白エリア”も多く、地域特化型の出店戦略にも可能性があると言えるでしょう。
パーソナルジム単体の市場規模は正確な統計が少ないものの、2020年代初頭と比較して1.5倍以上に成長しているとのデータもあり、継続的な需要拡大が見込まれています。
フィットネス業界全体との比較
一般的な24時間ジムや大型総合ジムと比べて、パーソナルジムは利用者1人あたりの単価が高く、少人数で運営可能という点で、ビジネスとしての収益性に優れています。
- 大手フィットネスジム:月額6,000円〜10,000円(平均)
- パーソナルジム:1回あたり7,000円〜15,000円(平均)
このように、少ない顧客数でも売上を立てられるモデルであることから、初期投資や運営リスクを抑えたい個人事業主にとっては非常に魅力的な選択肢になっています。
今後5年間の成長予測と参入タイミング
矢野経済研究所などのレポートによると、国内フィットネス市場は今後も年平均3〜5%の成長率を維持する見込みです。特にパーソナライズされたサービスへのニーズは高まっており、「運動×整体」「運動×予防」など、複合的なサポートを提供するジムが求められる傾向にあります。
こうした中、市場が成熟しきる前の“今”こそが、独立・開業における好タイミングとも言えるでしょう。
大手が入りにくいニッチな領域や地域密着型のスタイルであれば、まだまだブルーオーシャンが広がっています。
ユーザー層はどう変化している?ターゲットの傾向とニーズ
主要ターゲットは20〜40代女性が中心に
これまでのパーソナルジムの利用者といえば、ボディメイク志向の強い女性や短期集中ダイエットを目的とした方が多い印象でした。しかし近年は、「運動初心者の女性」や「産後・育児中のママ層」など、より幅広い層へと広がりを見せています。
特に30〜40代の女性を中心に、「自分の体を根本から整えたい」「プロに見てもらいながら継続したい」といった継続的でパーソナルなサポートへのニーズが高まっています。
価格よりも「信頼できる人に任せたい」という意識が強く、共感・安心感・空間の快適性が、トレーナー選びやジム選びの重要な決め手となっています。
美容・姿勢改善だけでなく「健康投資」へ
「ただ痩せたい」「見た目を良くしたい」だけでなく、「肩こりや腰痛を改善したい」「将来に向けて体を整えたい」といった予防医療の観点から通う人が増加傾向です。
このような背景から、単なる筋トレ指導にとどまらず、
- 姿勢改善
- 骨格・動作の分析
- 呼吸・ストレッチ指導
など、理学療法士や柔道整復師など医療系国家資格者がもつ専門知識が重宝される流れが加速しています。
健康志向が高いユーザーほど、「質の高いトレーナーに継続的に見てもらいたい」と考えており、単価が高くても価値を感じてもらえる土壌が整いつつあります。
「結果が出るジム」に対する期待値と不満
一方で、ユーザー側の期待値も上昇傾向にあり、「自己流ではなくプロに見てもらっているのだから結果が出て当然」と考える方も少なくありません。
その結果、「月8回通ったけど変化がない」「トレーナーの指導が浅い」といった不満から解約に至るケースもあります。
このような状況においては、単にトレーニング指導を行うだけでなく、顧客の真のニーズを理解して、目的に応じたアプローチを実施することで結果を提供できるかがカギとなります。
つまり、トレーナー側には今後ますます、
- ユーザー理解力(顧客に求められていることを理解する力)
- 説明力(問題点の原因と改善方法を自身が理解して説明する力)
- プログラム構築力(顧客満足が最も高くなるプログラムを構築する力)
といった“総合的な力”が求められていくといえるでしょう。

競合環境と差別化のヒント
大手ジム vs 個人経営ジム、それぞれの強みと弱み
パーソナルジム市場の拡大にともない、全国展開型の大手ジムから、1人で運営する個人ジムまで、競合の幅は広がっています。
比較項目 | 大手パーソナルジム | 個人経営ジム |
---|---|---|
信頼性・ブランド力 | ◎ | △(構築) |
サービスの一貫性 | △(トレーナーに依存) | ◎ |
柔軟性・対応力 | △(マニュアル通り) | ◎(現場で柔軟に対応) |
顧客との距離感 | ◯(分業あり) | ◎(1対1の関係構築) |
大手は安心感・実績が強みですが、個人ジムは“人”の魅力をダイレクトに伝えやすく、ローカルマーケットにおいては非常に強いポジションを取ることができます。
競合との差別化に効くキーワードは「専門性」
競争が激化する中で、価格だけで勝負しようとするのは非常に危険です。
むしろ、「あなたにしか提供できない価値=専門性」を前面に打ち出すことが、これからの時代の勝ち筋です。
例:
- 理学療法士の知識を活かした不調改善特化型パーソナル
- 柔道整復師による動作改善型ボディメイク
- 管理栄養士との連携による食事×運動プログラム
- 産後女性専門の骨盤矯正×ダイエットジム
このように、自分の「経験・資格・得意分野」を明確に打ち出すことで、他のジム共存できるポジションを築くことができます。
価格競争より“価値提供”で勝負する時代
価格を下げれば集客しやすくなりますが、それは「価格で選ばれた顧客」でもあります。
長期的に見れば、「この人にお願いしたい」「ここでなければ意味がない」と思ってもらえる関係性を築く方が、安定経営につながります。
たとえば
- 定期的な体組成測定や写真による「見える成果」の提供
- トレーニング指導だけでなく日々の不調も同時に改善
- 既往歴などのパーソナルデータを考慮した上でのプログラム立案
こうした価値提供を積み重ねることで、価格以上の満足を感じてもらい、**「価格ではなく人で選ばれるジム」**へと成長していけるのです。
まとめ|2025年はパーソナルジム開業に適したタイミング?
参入リスクと可能性を客観的に整理
パーソナルジム業界は、確かに**競合が増えている“成熟しつつある市場”**です。
しかしその一方で、ニーズが細分化し、顧客の目線がより“自分に合うサービス”へと向いている今、専門性を持つ個人や小規模ジムにとっては追い風とも言えます。
つまり、「誰でも成功できる市場」ではありませんが、戦略と準備次第で個人でも十分に勝負できるフェーズに入っているのです。
▼ 現在の開業環境の特徴:
- 顧客単価は高いが、継続・成果が求められる
- 大手の参入は進むが、地域密着型や専門性で差別化可能
- オンラインやアプリ連携など、運営の幅が広がっている
- 「人」で選ばれる傾向が強まり、個人ブランドが通用する
これらをふまえると、「個人の強み」を打ち出せる人にとっては今が絶好のタイミングと言えるでしょう。
今後の成長を見据えた準備とは
開業を成功に導くには、準備段階での「戦略設計」が重要です。
市場動向や顧客ニーズを踏まえた上で、以下のような視点を持つことが大切になります。
- 「誰に、どんな価値を、どう届けるか」を明確にする(コンセプト設計)
- ターゲットの行動・悩み・ライフスタイルを深く理解する(ペルソナ分析)
- 競合リサーチを行い、被らない切り口を探す(ポジショニング)
- 開業費・運営費・収支計画を数値で把握する(経営シミュレーション)
- SNSやブログなどでプレローンチ活動を始めておく(集客導線づくり)
これらを事前にしっかり準備することで、開業後の失敗リスクを大きく下げることができます。
結論
「パーソナルジム開業=ハイリスク・ハイリターン」ではありません。
むしろ、“適切な市場選定×独自性×戦略的な準備”の掛け算により、個人でも堅実に成長できるビジネスモデルです。
そして、そのスタート地点として、2025年は間違いなく「攻め時」。
将来的な独立を見据えている方は、今のうちから市場とニーズの変化に敏感になり、自分の強みを活かす方向性を考えてみてはいかがでしょうか?